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zoom RSS 「ショートショート」 【追伸】/【ひまわり】/【混合比】

  作成日時 : 2005/06/21 10:36   >>

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                     「追伸」

 拝啓
 いつも私の事をご心配頂き有難うございます。

 大変ご心配をお掛けして心苦しく、今日はお手紙を差し上げました。

 私の事で余りご心配にならないよう、皆さんのご健康とお幸せの為に、そのエネルギーを使ってください。                      

 ご心配のように私が「近い将来滅びてしまう」等と云う事は決して有りませんから、どうぞご安心下さい。

 私も長い間に色々な経験をたくさんしてきましたが、へこたれた事など有りません。

最初は、「太陽」と同じ位熱い思いをしたかと思うと、次は皆さんが「氷河期」と呼ぶ信じられない程の寒さも味わいました。

 約9100万年前ごろには、海水温が34〜37度だったこともありこの頃が最も高温だったが、それでも南極には現在は氷が存在していて、恐竜が栄え北極にはワニが住んでいたのです。

 その度に、今の皆さんのように世界中を闊歩していた動物があっという間に絶滅してしまったりしたのを目撃しましたが、私自身はお蔭様で変わりなく過ごしてきました。

 皆さんは、ご自分達の環境破壊で貴重な動物が絶滅しそうだと大変気を使っていらっしゃいますが、その一方である種の動物の繁殖に困っているのも存じています。

 私の周りの状況によってあらゆる生物は進化していくのです。進化の過程では絶滅や新種の出現は極々当たり前の事なのです。

 ご存知でしょうが、皆さんにとっては生きていく為に酸素が必要ですが、ずっと昔は炭酸ガスで生きる生物しかいなかった時もあったのです。 
                
 私を取り巻く環境は、その時々で激しく変化しましたし、これからも変ると思いますが、全然気にしていません。 
                                     
 もう46億年も修羅場を潜って生きて来ましたから何があってもびくともしません。

 それよりも、皆さんの将来の方が心配です。

 あなた方人間という種類の動物が絶滅しないかと、老婆心ながら心配です。

 私としては、皆さんとはまだ短いお付き合いなんですが。

 皆さんは、私の環境を改善して下さろうと、大変努力されておられます。

 私の環境が変化し始めたのも、ご自分達の責任と思われてか「地球を守ろう」「地球を救おう」と世界中で運動をされている事も存じております。

 でも私は(重ねて申し上げますが)、私の周囲に何が起こっても全く不便でも不幸でもありません。

 失礼な言い方かも知れませんが、的外れのおせっかい、私の大きさと強さを知らない思い上がりとさえ感じます。

 よく皆さんがお使いになる、「一人一人の努力で地球を救おう」という言葉はおやめになったほうが良いかと思います。

 皆さんの一人一人にとって、私は余りにも大きすぎて「自分一人位が汚しても」という事になりかねません。                                     

 「自分達の命を救おう」と、正しい目的を掲げられたら、もう少しピンとくるかも知れません。

 それから(私のおせっかいですが)、本当に皆さんがご自分達を救いたいなら、「本当の環境」を正しい姿にしていく事から初めるれれたらと思います。

 地球の環境で、一番小さい単位は何だとお思いですか?

 皆さんは、私地球という星に住んでいる訳ですから、一番大きな環境は「地球」、次が幾つかの大陸、次が各国、国内各都市、会社、学校等になっていって最小単位は「家庭」です。

 家庭の先は、皆さん一人一人の「個」ですから。

 私が思うには、最小の単位の「家庭環境」を大切にする心が作られれば、次は街、国、世界と広がると思います。

 勝手な事ばかり書いてしまいましたが、どうか私のお話も参考にして「環境保護」に頑張って下さい。

 末筆ながら皆さんの幸福をお祈りします。
                                                敬具

    地球の皆さんへ 
                                          地球より



 
 追伸: (私の経験から、皆さんの置かれている状況は余り良くなく残された時間も余りありません


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                        「ひわまり」

 家庭用シュレーターが唸りを上げて、溜まりに溜まった帳簿を貪欲に食べ続けている。

 妻は黙々と帳簿のホッチキスや金属ファスナーを外し、シュレッターの食事を途絶えさせないよう、ペーパーだけにして夫の脇に積み上げている。

 35年間続けてきた会社を、結局破産させねばならなくなった無念さが、総勘定元帳のそれぞれのページから湧き上がってくる。

 破産処理申請の夜に、一つだけ会社から失敬した品物がこの家庭用シュレッタ‐だ。

 ゴミ処理方法が変って20何種類もの分別収集とかで、紙もうっかり捨てられなくなった事を、地域自治会役員経験で熟知していた妻の入れ知恵だった。

 5年以上前の倒産会社の帳簿とはいえ、そのまま「紙ゴミ」として出すのは憚れるご時世だ。

 手で破いただけだと「一般ゴミ」扱いとなり、それでなくてもボリュームに気を使う「一般ゴミ」が我家だけで何袋も出すようになってしまい顰蹙ものだという理由だった。

 「35年間がんばった証として頂いても罰は当たらないだろう」と勝手なロジックで持ち帰っていた機械が威力を発揮している。

 シュレッターに掛けると「資源ごみ」扱いになって大量でもクレームはない。

 「35年間頑張って結局何も残らなかったようだけで、娘という宝が残ったからいいか」シュレッタ‐への給仕を続けながら、夫がボッソと言った。

 妻が、いつも何か面白い言葉を思いついた時に見せる満面の笑みで、夫の顔を覗き込んだ。

 「娘だけじゃないわよ。シュレッタ‐も残ったわ」

 もう一つ、真夏のひまわりのような宝物を言わなかった自分を、夫は胸の中で小さく後悔した。




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        「混合比」

 201X年4月、K共和国はリーダーJ総書記長の生誕80年祝賀会に合わせて、日本、アメリカを始め国連加盟国の全てが反対する中で、再び新型ミサイルの発射準備をしていた。
 今回は、中国もロシアも猛反対を表明し、発射を強行すれば国連安保理事会での制裁決議に賛成を表明していたが、K共和国のリーダーJ総書記長は「屁とも思わぬ」とコメントし、新型ミサイルの画期的性能を大々的にTVで報道させた。

 世界的にお馴染みとなった、とてつもなく攻撃的イントネーションで「親愛なるJ国家元首様のおかげで・・・」と始めるアナウンサーのおばはんが、塗り壁のような厚白化粧と若作りのファッションで滔々とニュースを読み始めた。
「我偉大なる国家K共和国は、世界最強のロケットで世界最大の人工衛星を打ち上げて、親愛なるJ国家元首様の誕生日を祝う」

 どうやら、世界中の情報を分析すると、世界最強のロケットであることは事実らしい。

2009年4月に、日米韓中ロの制止を無視して発射したテポドン2号は、結果的に日本列島とアラスカの中間位まで飛んで、太平洋に落下した。
 3段ロケットらしかったが、順調に最終段階まで切り離されたのかどうかも分からず、打ち上げたという人工衛星は、世界中の宇宙監視機関では発見することが出来なかった。

 人工衛星から流れていると主張していた470Hzでの「親愛なるJ国家元首様を称える歌」というのも、あらゆる受信装置をもってしても受信不能だったが、当のK共和国のTVでは、党・軍幹部がスタジオで「親愛なるJ国家元首様を称える歌」に聞き入っているシーンが繰り返し流され、国中は「人工衛星打ち上げ祝賀」ムードだったような映像が流れた。

 結局、世界の分析ではテポドン2号はどうやら失敗、人工衛星は願望、収穫は数千キロ飛んでいく事が証明された事位だった。

 特にアメリカは、アラスカまで届かない事や、いまだ弾頭に搭載できるような核の小型化にも到達していない事から、のんびりとK共和国を非難する議長声明でお茶を濁した。

 これに臍を曲げたJ総書記長は、直ちに凍結していた核開発を再開し、K共和国の非核化と安定のためのK6会議からも脱退して数年、ついにとてつもないロケットを開発したのだった。
 情報によれば、新型ロケットは太さも長さもテポドン2号の3倍以上で、その燃料は画期的な固体酸素燃料と固体水素燃料であることが確認された。

 従来、ロケット燃料としては固体燃料と液体燃料があるが、固体燃料とは早い話が火薬だが、最新の液体燃料は液体酸素と液体水素である。
 固体燃料は扱いが容易で、ロケットへの充填にも便利なので、移動式ミサイルに適しているが、液体燃料に比べてエネルギー効率が落ちるので、宇宙開発などでは液体燃料が優っている。

 K共和国の開発した固体酸素燃料と固体水素燃料は、固体燃料の利便さと液体燃料のエネルギー効率を活かした画期的なものだ。
 その上、彼らの固体酸素燃料と固体水素燃料は非常に高密度で、液体燃料に比べて5倍の体積に匹敵する燃料搭載が可能になったらしい。
 この事は、新型ロケットの射程距離がアメリカ大陸どころか、火星まで行って帰ってくる程の能力があり、搭載可能重量も飛躍的に増大された事を意味していた。
 
 どうやら、K共和国の軍部・技術者は「核の小型化」に失敗し、それなら「でっかい核をそのまま運ぼうぜ」という事から、馬鹿でかいロケットとそれに必要な新型燃料の開発に成功したらしい。
 
 このことが、どうやら本当らしい事は、日頃何事もひた隠しするK共和国が、連日自信たっぷりに新燃料の詳細や、ロケットの発射準備状況をTVで報道し、この成功を記念して改めたロケットの名前を、アナウンサーのおばはんが例の喧嘩腰イントネーションで「デカボン1号、デカボン1号」と絶叫している事からも伺えた。

 もっとも、デカボン1号の開発のために、国民の99%が第二次世界大戦中のアウシュビッツにおけるユダヤ人にも劣らない悲惨な状況にあることは、一切報道されなかった。

 当然の事ながら、デカボン1号の発射予告は世界を震撼とさせ、さすがのお友達中国、ロシアも真っ青になって、あの手この手で懐柔策を講じたが「新型燃料のノウハウが欲しいだけだろう」とK総書記長から罵られる有様だった。
もう発射を止める手段はK共和国への先制攻撃しかないが、僅か30kmの休戦ラインを挟んで首都を構える隣国D国が、一時的にしろ壊滅的被害を受ける事を想定すると簡単には実行できないジレンマに陥っていた。

 日本海と太平洋、大西洋には世界中のミサイル防衛艦隊が集結して、デカボン1号の迎撃に備えていた。
 K共和国は、デカボン1号が何処へ飛んでいくのか、何を積んでいるのかだけは秘密にしているので「とりあえず打ち落とそう」ということで各国が一致した結果だ。
 なにしろ、核が小型でなくてもOKなほど、馬鹿でかい搭載能力があるのだから。

 世界中の人間が固唾を呑む中で、遂にデカボン1号発射の日が来た。
 
 発射台の周りには、華やかな装飾が施され、特設監視棟にはK書記長自ら中央に座して、その周囲はK共和国を動かす党・軍首脳陣が正装して囲んでいた。

K共和国指導部オールスター総出演映画のようである。空は雲ひとつ無い、抜けるような青空だ。

秒読みが始まった。 「10、9、8,7,6,5,4,2,1、0」。

 轟音が鳴り響き、ロケットの下部が白煙と水蒸気に包まれたが、2,3秒経ったかと思われた時、轟音が止み水蒸気の間から青みがかった液体がチョロチョロと流れ出して来たかと思う間もなく、その量は一気にTV画面を一杯に覆った。

 慌ててズームダウンして、大きく引かれた画面には、ロケットの下部を破壊しながら流れ出す、今まで世界中の人間が見たことも無いような水量の激流だった。

 ロケットのスカート部からは、中国長江中流域部分に建設されている世界最大のダムの決壊もかく有りなんと思えるような水量が、スマトラ沖地震における津波をも越える高さの波となって4方に走り出した。

 ロケットがスローモーションで倒れた後も、ゴロンと横倒しになったロケットの開口部からは、尽きる事のない量と勢いで新たな波が吐き出されていた。

 大津波は、発射台も監視会場もTVカメラも、何もかも全てを飲み込んでいった。

 何も映らなくなった砂嵐のTV画面の前で、世界中の人間が固まっていた。

 暫くして突然画面が、真っ青な空を映したままとなってテロップだけが流れ出した。

 「K共和国のデカボン1号は失敗した模様。原因は、固体水素と固体酸素の混合の過程で何らかの不具合が生じ、H(水素原子)2個とO(酸素原子)1個が結合した後に燃焼が起きず、そのままH2O(水)になってしまった模様。K書記長を含むK共和国指導部は発射監視棟もろとも所在が不明。尚、放出された水量は毎秒700トン、総量2100万トンにのぼり・・・・・・・・・・・」

 K共和国と隣国D国が、念願の祖国統一をしたのは、この6ヶ月後であった。

 K総書記長長の行方は、今だ不明である。 
                                                              完 



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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
お手紙ありがとうございました。
あなた様を守ろうなどと、思い上がりもはなはだしいことです。
だって、守っていただいているのは、我々の方なのですから。
私たちの仲間には、自分を中心においてしか物を考えられない輩が多く、これが一番問題のようです。
SHO
2005/10/01 08:51
こんばんは
訪問したので、足跡代わりに書き込みしていきます。

「追伸」拝読しました
僕なら 「昨今、私のストレス発散によって皆様にご迷惑かけていることを
深くお詫びします」で締めますが 

http://book.geocities.jp/yuuichi_ohkubo/
おーくぼ
2012/06/24 04:59
コメント有難うございます。
地球もストレス解消に、ちょっとストレッチなどしたくなるかも。
この「追伸」と「混合比」は、東日本大震災の相当前、北朝鮮が「テポドン」というミサイルを実験するらしいよ・・と言っていた頃の作です。
おっちゃん
2012/06/24 15:35

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